初任給アップと奨学金肩代わり制度 ― 企業が仕掛ける人材獲得競争のいま

コラム

近年の就職ニュースでよく目にするのが「初任給の大幅増」。

さらに最近では「奨学金返済支援制度」を導入する企業も増えてきました。

大学生の約半数が利用する奨学金は、社会人にとって大きな負担。

その返済を企業が肩代わりする動きは、人材獲得競争の激しさを物語っています。


奨学金返済の現実

  • 日本学生支援機構(JASSO)の調査では、大学生の55%が奨学金を利用。
  • 平均借入額は約300万円、返済期間は15〜20年。
  • 毎月の返済額は1.5万〜2万円台で、初任給20万円台前半の若手にとっては大きな負担です。

返済を滞納すると延滞金(最大年5%)や信用情報への登録、最悪の場合は差し押さえまで発展するリスクもあります。まさに「人生最初の大きな借金」と言えるでしょう。


企業の支援制度は2パターン

① 手当方式(給与に上乗せ)

毎月の給与に「奨学金返済手当」を加えて支給する方式。

導入しやすい一方で、課税対象となり手取りはやや減ります。

② 代理返還方式(企業が直接返済)

企業が直接JASSOへ返済を送金する仕組み。

確実に奨学金に充当される安心感がありますが、こちらも課税対象となります。


実際に導入している企業例

企業名所在地支援内容備考
ALSOK東京月額18,000円、最長5年(最大108万円)代理返還方式
ツルハホールディングス北海道月額20,000円手当方式とされるケースあり
ノジマ神奈川月額10,000円大手家電量販企業
JR東日本東京年額50,000円福利厚生の一環
松屋フーズHD東京毎月の返済額と同額を支給手当形式
中国新聞社広島年額120,000円地方新聞社
九電工福岡月額15,000円九州エリアの電力系企業
イガリ建設北海道月額30,000円、上限288万円地方建設業、中小企業
創伸建設東京月額20,000円、合計250万円まで中小企業、手当+代理返還併用型

地域や業種による違い

奨学金返済支援制度は、企業の立地や規模によって特徴が分かれます。

  • 首都圏の大企業 → 福利厚生の一環として導入し、採用広報やブランド強化に活用。
  • 地方の中小企業 → 人材獲得の切り札として支援額を手厚く設定し、大手との差別化を狙う。

つまり、「導入しているかどうか」だけでなく、「どの地域・業種がどういう意図で導入しているか」 を見極めることが、就活生や転職希望者にとって大切になってきます。


まとめ

奨学金返済は若手社会人にとって大きな重荷です。

そこに「初任給アップ」と「奨学金返済支援」を両輪で打ち出す企業が増えているのは、人材確保競争が本格化している証拠でしょう。

就職先を選ぶときには、給与水準だけでなく「奨学金返済支援があるかどうか」も
重要な判断材料になりそうです。

安心してキャリアを積める環境を整える企業が増えることで、
若手世代にとって働きやすい社会が少しずつ広がっていくのかもしれません。

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