2025年6月、アメリカ政府が日本を含むアジアの同盟国に対して
「防衛費をGDP比5%まで増やすよう要請した」と報道された。
このニュースに対して多くの日本人が「横暴すぎる」と感じたかもしれない。
だが、昨今の国際情勢を踏まえれば、
この要求は単なる無茶振りではなく、一理あるものともいえる。
今回はこの防衛費5%要求について、冷静に背景や意味を考えてみたい。
そもそもGDP5%とはどのくらいの規模なのか?
日本の名目GDPはおよそ600兆円。
このうち5%となると防衛費は約30兆円に達する。
現行の防衛費はおよそ12兆円(GDP比2%)なので、
単純計算で約2.5倍に増額することになる。
これは厚生労働省の年間予算に匹敵するほどの巨額であり、
日本の国家予算に与えるインパクトは極めて大きい。
一見すると「さすがにやりすぎでは?」と思われても仕方がないが、
アメリカの要求はアメリカに金を払えという話ではない。
あくまで「自国の防衛力を自前で強化してくれ」ということだ。
アメリカの真意は?
アメリカが求めているのは、同盟国が他国任せの防衛体制から脱却し、
主体的に安全保障体制を構築すること。
特に中国の軍事的台頭や北朝鮮の核開発が進む中、
アジア太平洋地域での安全保障環境は急速に悪化している。
これまでアメリカは「世界の警察」として他国を守ってきたが、
そのコストとリスクは増大している。
アメリカ国内でも
「他国を守るために自国の若者の命を犠牲にすべきか?」という声が強まりつつある。
防衛費の拡大要請は、そうした国民感情にも応える形だ。
防衛費は“投資”になるのか?
日本がもし本格的に防衛費をGDP比5%まで引き上げた場合、
当然ながら国家予算の大幅な見直しが必要になる。
ただし、防衛費はすべて国外に流れるわけではない。
国内の防衛産業や技術開発、人材育成への投資にもなる。
たとえばスタンドオフミサイルの導入、
ドローンや人工知能を用いた防衛システムの整備、
サイバー攻撃への対処体制の強化、
自衛隊員の待遇改善など、
幅広い分野で経済波及効果が見込める。
また、防衛費増額は結果的に抑止力となる。
敵対勢力に「攻めても勝ち目がない」と思わせることが、
最もコストの少ない安全保障のかたちなのだ。
それでも高すぎる壁
とはいえ、現実問題として30兆円の防衛費は非常に大きな負担である。
税収だけでまかなうのは困難で、
増税や他分野の予算削減が避けられない。
また、日本国内には「軍備拡張=戦争への道」という感情的な反発も根強い。
だからこそ、いま求められているのは冷静な議論と長期的な視点だ。
防衛費をどう使うか、どのような体制を築くか。
それを国民全体で共有し、考えるタイミングが来ているのかもしれない。
終わりに
アメリカの「GDP比5%要求」は確かに唐突でインパクトが強い。
だが、それは“アメリカの都合”だけではなく、
“世界が変わった”ことの象徴でもある。
私たち自身が、自国の安全保障をどこまで真剣に考えるのか。
問われているのは、日本の覚悟そのものである。
コメント